「歴史」ってなんなんだ

おことわり

 何かしらのご意見がございましたら、DMやリプライでお願い致します。ただの価値観の押し付けだと思って頂ければ幸いです。

 

1. 歴史ってなんなんだ

 歴史ってなんなんだ。これはおそらくずっと解決しない問題でしょうし、人の価値観によって全く捉え方が異なります。

 しかしながら、どんな文献にも書いてないことを、さも書いてあるかの様に吹聴したり、とある1単語だけを拾って、「A以外はあり得ない!!」という解釈をしてしまったりする方がいるのも事実です。

 政治的な話題をする気はありませんが、わかりやすい例えを挙げるとするのならば、本邦と中国・韓国との歴史的解釈が挙げられます。

 変な話、この2ヵ国は「建国神話」に『大日本帝国』という悪者が必要だと思いますので、このような事態になってると考えることができます。

 

 本題から話題が逸れ始めているので、話題を戻します。

 

 私が匙を投げているのは先述の内容ではなく、社史や資料を自分にとって都合良く解釈している上、その解釈を他人に押し付けようとしている方のことです。今回がただの価値観の押し付け合いであることがわかりますね。やったあ。

 これも具体例が無いと何言ってるのかさっぱり分からないですよね。

 このイオンの設定を弄って考えてみましょう。この店舗は1980年代に忠実屋(首都圏を中心に展開していた総合スーパー)として開店しましたが、1994年に忠実屋がダイエーに合併されたのに伴い、店舗の名前も「ダイエー」になります。そして、2016年にダイエーの大型店はイオンに譲渡され、店舗の名前も「イオン」となります。

 さて、この文章を読んであなたはどう解釈したでしょうか? 

 解釈については人によって異なるでしょうし、それを他の人に無理やり押し付けてない限り、私は特になんとも思いません。しかし、今回ではあえて幾つかの「正解」を考えていきましょう。

 

  1. 忠実屋から今日のイオンまで連続した歴史として捉える
  2. 忠実屋?そんなの知らんから、ダイエーになった94年以降を店齢として数え、イオンは無視
  3. イオンより前?昔のことだからどうでも良くない?

 500回でも書きますが、2〜3を個人の解釈とするのは異論はありませんし、何を考えるかは本邦では自由です。

 しかしながら、2.  を押し付け「ダイエーA店」と呼ぶことを強要してる方がいるのも事実です。あくまでも私の意見ですが、このような歪曲をさも「正しい歴史」として押し付けるのは中々酷い話です。

 

 歴史を学問的に学んでない方は納得できないのかもしれませんが、歴史というのは「誰が」「いつ」「どういう価値観で記されているのか」というのが重要視されます。(これもざっくりしてるので部分的に間違ってるかも)

 歴史学者であるイギリスのエドワード・ハレット・カーは「歴史とは、現在と過去との間の尽きることのない対話である」と自著に記しています。

 2.の意見を上記の観点で見ていきましょう。「誰が」という観点では一介の愛好家が言ってるだけなのでNG。「いつ」は2023年時点を指しているのであれば、×に近い△。「どういう価値観で記されているか」という観点では、お世辞にも客観的とは言えないので×になります。

 3.は現在の業態がイオンである限り、「間違い」とも言えませんしイオンになってn周年という何かしらの施策を行うこともあるでしょうから今は問題視しません。

 

 1.の妥当性について検討してみましょう。

 写真は23年2月に閉店したイオン旭店の売り尽くしセールの様子です。非常にざっくりと説明しますと、ジャスコからイオンに転換した店舗となります。開店したのは1982年ですね。その下にはイオンと書かれていることが分かります。この時点で「誰が」というのは運営者であるイオンリテールなので、100点満点で完璧になります。「いつ」は1982年から2023年のことを指しており、これも妥当性があるものです。「どんな価値観で」ではこれも、運営者であるイオンリテールであるため妥当性があるものになります。

 次は応用問題(?)です。

このダイエー赤羽店ですが、54年間ずっとこの建物で営業してきた訳ではないので、見方によっては2つの解釈が可能です。

 

①  この土地に「ダイエー赤羽店」は継続していたので、旧店舗から通算してn年営業したと   記載(写真の通りですね)

②  建物は建て替えられているので、現店舗を「ダイエー赤羽店(2代目)」と考える

 (私はこっち)

 

 これに関しては人それぞれ…としか言いようがありません。昔から当該店で買い物していた方は前者的な解釈をするのが一般的でしょう。①と②を上手いことまとめて見出しにしている記事がありますので、下の参考にしたもの欄を見てみてください。

 

2.  まとめ

 まあ、言いたいことは歴史の解釈って押し付けるものでもないし、根拠のない独自研究は人を不快にすることもあるよってことです。(私が言えたことではないですが…)

 歴史に限らず地理や文学、商学(これはコロコロ変わるので何とも言えない)では、上記のことを重視されることがあると思います。レポートとかでも出典を明示するように言われるでしょうし、Wikipediaを文献として利用できないのは「誰が」書いたか分からないからでしょう。

 理系の学問と文系の学問の違いの一つにこれが挙げられるのではないかと思っています。

 もちろん、学問的に記載すべきとは言いませんし、そのように記載していないものは絶対悪!!と言っている訳でもありません。しかし、「客観的な事実」と「個人の感想」をごっちゃにして記載するのは如何な物かと思われます。その2つを合成した「キメラ」を他者に押し付けたり、賛同したりしない人に対して攻撃をすることはモラル面で好ましくないことです。

 

3. 最後に

 商業施設に限ったお話ではありませんが、特定の趣味においてより詳しくなろうと思えば面倒臭いことがあるのかも知れません。それでも、その面倒くさいのはきっとあなたを異次元に連れてってくれるはずです。(ブログの資料集めで泣いてる自分はこれになってる)

 歴史というのも学者によって解釈も分かれてますし、YouTubeの広告のような「真実の日本の歴史」を語った胡散臭いものまで玉石混交です。後者に至っては議論の価値すらありません。

 私が一施設の歴史等を語る上で大事にしているものは先ほども書いた通り「誰が」「いつ」「どんな価値観で」という観点であり、その原理原則をも否定するような方を非難しているのです。

 少々大袈裟な物言いですが、このような発言が認められないのであれば、我々の言論の自由はどこへ行ってしまうのでしょうか。

参考にしたもの

イオン旭店、2023年2月閉店-旧扇屋ジャスコ、「旭サンモール」はリニューアルへ | 都市商業研究所

ダイエー赤羽店、2023年9月10日閉店-開店54年・建替えから僅か11年で、隣接地に新店舗開設 | 都市商業研究所

 

誠品生活日本橋

東京都中央区コレド室町テラス内に入居している専門店。

 

1. 概要

 そもそも誠品生活って何ぞ?と思う方がいらっしゃるでしょうから、説明しておきます。

 誠品生活は当業態の他に書店、マンション、画廊、ホテルなどを運営している台湾の企業です。観光地としてお馴染みの西門や信義(近くに台北101がある)にも出店しており、実は行ったことのある方もいるのではないでしょうか。

 当店は日本唯一の店舗で、2019年のコレド室町テラス開業時から営業しています。

 どんなお店なのかは写真で見せた方が早そうなので中を見ていきましょう。

2. 店内の様子

 肝心な部分の写真撮ってなかった(笑)

 一応、書店がメインでその中にちょこちょこ専門店が入ってる感じでT-STYLEとかに近しい感じした。この他にも黒松沙士や統一麺や酒類を販売する食品コーナーもありました。

 あんまりちゃんと見れてなかったので、なんとも言えませんが台湾の書籍は観光系が多かったような…? 中文書籍のコーナーがどこら辺なのか見つけられなかったのが残念です。

 

 3. 個人的な感想

 実はこの誠品生活(日本橋に限った話ですが)、筆者の地元である横浜が誇る有隣堂がライセンシー(ライセンスを受け取る人)となっているのです。近年の有隣堂の積極的な施策は誠品生活でのノウハウがあるのでしょうか。

 誠品生活は1989年に創業し、人文、アートの書籍を中心に画廊を設置しており、日本橋のような業態になる芽は既にあったとも言えるでしょう。筆者は台湾に一度行ったことがある程度で、桃園の誠品書店で本を買った程度なのであまり詳しくは言えませんが、台湾の店舗の写真や日本橋の様子を見る限り独特な雰囲気があります。ひょっとしたらこれが「誠品文化」なのかも知れません。

 このようなタイプの書店として蔦屋書店が考えられると思いますが、台湾の店舗であるため「台湾らしさ」での差別化が容易に行えます。

 個人的には関西圏への出店を期待したいところですが、有隣堂(いくら関西に店舗があるとはいえ)がライセンシーである限り難しいでしょう。

 

今回はこれで失礼します。

 

参考にしたもの

eslite誠品 | 公式サイト

コレド室町テラス、2019年9月27日開業-日本橋室町三井タワーに「誠品生活日本橋」など30以上が出店 | 都市商業研究所

 

 

 

イオンモール茨木

大阪府茨木市に所在するショッピングセンター。

 当館は2001年1月1日に「イカル茨木」として開業しました。マイカルの破産は
同年9月のことで、マイカルとしては最後の大型店です。資金繰りは既に悪化しており、建設工事がちょこちょこ(?)中断したり開業が危ぶまれたりしたこともあったそうです。1月1日の開業は前代未聞のことで、話題性を確保できるといった面が表向きなのでしょうが、当時のマイカルが現金を欲していたことがなんとなく分かりますね。

 現在の核テナントはイオンスタイル茨木(旧サティ)ですが、以前は茨木駅側(画像1枚目の部分)に茨木ビブレが存在しました。

 余談ですが、当地に商業施設を誘致する計画は1990年代前半より存在し、そごうの出店が計画されていました。そごうは茨木を横浜に次ぐ旗艦店と位置付ける予定だったようです。それでは中に…

1. モール専門店街

ビブレな手動ドア

 1階はフードコート・スイーツ・ライフスタイルのフロアです。無印良品やGAPFactoryStore、スターバックスなどが入居しています。フードコート内はケンチキミスド、マクナル、すき家、神座など定番な感じがします。

銀だこ、府内にあるの割とびっくり

 

○○○がビブレっぽい(エムズウォークエリアのエスカレーターにもあるけど)



 2階はレディス・メンズのフロアです。全体的に綺麗に改装されているものの、なんとなーくビブレな雰囲気は残っていて楽しいと思います。入居している店舗はGU、スリーコインズ、珈琲館、キャンドゥ、グローバルワークなどです。茨木市立穂積図書館もこのフロアにあります。

窓際吹抜がマイカルっぽい

 3階はライフスタイル・キッズ・ホビーのフロアです。入居している店舗はエディオン未来屋書店ABCマートなど。中規模なイオンモールらしいテナントが多いですね。

 4階はシネマ・アミューズメント・レストランのフロアです。入居している店舗はイオンシネマ(旧ワーナー・マイカル・シネマズ)、モーリーファンタジーf(元ダイナレックスだったりするのかな…?)、串家物語、サイゼリヤ、にぎりの徳兵衛、鶴橋風月などです。

 コナミスポーツクラブ(旧エグザス)が入居している別棟が存在しており、地下通路にて連絡しています。

2. イオンスタイル茨木

 阪急電車茨木市駅の辺りにイオンスタイル新茨木がありますが、新茨木より当店の方が新しいです。新茨木の「新」はあくまでも、旧ジャスコの茨木店(1986年閉店)に対するもののようです。

 茨木サティとして開店し、2011年にイオンにブランド統一、スタイル化したのは2015年のことです。

絵が入っているタイプのサインかわいい

 1階は食品、H&BC(グラムビューティク化はしていない模様)、イオンリカーがあります。インストアベーカリーは旧サティらしくカンテボーレです。

レディスの取り扱いはありません!

 2階は紳士・婦人服のフロアです。スクエアフィールド、セルフサービス、ダブルフォーカス、アスビー、エスパリエ、スポージアム、マルシェルージュなどの扱いがあります。イオンスタイル展開開始後に開店した店舗みたいで、照明類の使い方がサティっぽくないですね。ここまで気合いの入ったイオンスタイル、湘南茅ケ崎と広島府中(増床による改装だけど)しか知らない…

 3階は住余(リビング、キッチン用品・寝具・家電など)、キッズ・ベビーを扱っています。ホームコーディのサイン表記はありませんでした。果たしてこの記事はクリスマス前にアップされるのか…?

3. 個人的な感想

 マイカル感を残しながらも、近年のイオンモールらしさも感じられる一度で二度美味しいイオンモールの一つでした。立地も茨木駅大阪モノレール宇野辺駅から徒歩圏内、店舗後ろを通るJR京都線東海道線)の向かいに立命館大学があるなど恵まれた条件のように思えます。接している道の流れが悪いところにあるのはマイカルらしいけど…

 マイカルが最後に作った「夢の跡」(?)なので訪問をお勧めしたいです。

「界隈」という考え方が「界隈」をダメにする~自戒の念を込めて~

 なんかフランス料理みたいなタイトルですね。何言いたいんだ?こいつとも思われそうですが界隈について辞書で調べてみましょう(これをやりたいだけ)

界隈

読み方:かいわい

意味:そのあたり一帯。付近。近辺。

例文:「銀座-」

引用元:goo辞書 界隈(かいわい)の意味 - goo国語辞書

 さすが辞書。原義が正しく書かれていますね。でも私が言及したい「界隈」とは異なるので、ネット用語辞典的なもので「界隈」について調べてみましょう。

具体的には、一般的な「界隈」が地理的な表現に使われるのに対し、 ネット用語での「界隈」は、属性や特定のジャンル、業界を意味します。

引用元: 「界隈」の意味は?ネット用語としての「界隈」の意味と使い方も解説! | Career-Picks

 こっちの意味ですね。わーい。これ絡みでここ数日モヤモヤしてるので、着地点がどうなるか分かりませんがつらつら書いていきます。

1. どうして「界隈」ができるのか?

 理由は単純明快で私のツイート・ブログ、もしくはあなたのツイート・ブログを見れば分かりますね。「界隈」の場合、持っている趣味の属性によって私たちは「同じ界隈」なのか「違う界隈」なのか分けられますね。同じ趣味の人が集まってわいわい(こなみ)すると「界隈」が生まれますよね(?)

 これまでの内容とブログのタイトルだけ見ると「猿界隈と犬界隈を一緒にしろってことか!!」と言われそうですがそういう訳ではありません。自分があまり得意ではない「界隈」という考え方を更に言及するとともに、自分も無意識のうちに「界隈」の一員ではないかと自省していきます。

 

2. 「界隈」という言葉がなぜ嫌いなのか?

「界隈」という言葉、あまり得意ではないんだよなあ…
何だか壁を作っているみたいで
🤓はどうなんだって言われそうだけど、これはある程度このツイートを見た人の解釈に依ると弊は思っているので

 

 これは私の以前のツイートです(この時期ぐらいから「界隈」という考え方ってあれじゃないかな…と思っていました)。まあ、理由はこんなもんです。別に馴れ合いや身内ネタは五万と見るし、第三者(画面の向こうのあなた)が私の「界隈」を脳内でどうカテゴライズしようが勝手なのですし、それは悪いことではないと思います。「〇〇界隈では△△が常識」だとか、「〇〇界隈では□□は流行語だよね!」と言われるとえぇ…と思ったり、□□を不快に思ってる人(残念ながらどんなブログでもツイートでもそれを見るだけで不快に思う人は存在します。)にとっては気持ちの良いものではないでしょう。

 これらの発言はもちろん「界隈」の外の人もうっかり見ることが出来るかもしれませんし、少し興味あるけど「参加」したいなあと思っている人に対して見えないバリアを作ってしまうことになります。見えないバリアを感じて、「新しい人」が入らなくなるばかりではなく□□を面白くないと思っている人も「界隈」から抜けていき、「界隈」の規模がどんどん小さくなっていきます。「界隈」の規模が小さくなると、どんどん「界隈」に特化したネタになっていき、やがてその「界隈」が消失してしまう…かも知れません。

 個人的にはFF外で「界隈」への帰属意識が高く、上記の太文字のようなことをおっしゃっている方を数回見たことありますが、どれも「えぇ…」と思ったり「なんかハードルを感じるなあ」と思ったりしました。まあ、見る人の気持ちなので人によって大きく異なるのでしょうが。

 

3. 「界隈」という枠に縛られないおでかけをしたい

 個人的に今年(2022年)のおでかけで充実(商業施設めぐり・徘徊・観光のバランスが取れた的な意味合い)なのは札幌おでかけでした。時間がかなりあったからってのもあるけど。自分が面白いと思うことは「界隈」に囚われずやるべきですし、これやったことないからやってみよう!的なチャレンジ精神も重要だと思います。(まあ、無理して自分が興味ないことをする必要はないけど)

 

4. 結局何が言いたいのか?

 冒頭(?)でも書きましたが、身内ネタや内輪ネタは否定しませんし、むしろそういったノリには好意的です。(これも不快に思う人はいるだろうから、節度は持ちたいですね。)しかし、こういった身内ネタをあたかもSNSでその趣味について語っている人全員が好きかのように言う(=界隈での流行語)のは少し違うのでは…?と思います。

 まあ、日本語自体盛大な身内ネタのようなものであまり気にしすぎるのは野暮のような気がしますが…。個人的に書きたいなあと思って書いているのに、伝えたいことがなかなか書けていない気がしますが笑

 新しい年が近づいて来ていることですし、今一度「界隈」について考え直して、自分がすっきりしたいだけなのでこの辺にしておきます。あまり内向きなツイートをしないようにしたいですね。(いざとなればサークル機能もあるし)

 

 

  

 

なぜフロアガイドに夢中になるのか?

 

 皆さんは「フロアガイド」と聞くと、どのようなイメージを持つのでしょうか?人によって大きく異なるでしょう。

 例えば、設置してないと【自主規制】だと思う人もいるし、あるかないかをある種の博打のように楽しんでいる人(筆者はこれらしい)はもちろん、イオンフードスタイル横浜西口店の総務課長はカテプリにフロアガイドを設置しないで欲しいと思う人がいるなど、楽しみ方は十人十色だと言えそうです。

 

 そんな多様(?)な楽しみ方があるフロアガイドですが、近年の新型コロナウィルスの流行やペーパーレス化推進の風潮などにより、感染対策の一環として配布を中止したり、インフォメーションや係員(店員)に申し出る形での配布方法に切り替えたりしています。(中には後者を濫用して、館内のフロアガイドを探させる人までいらっしゃいますが…)

 

 今回はフロアガイドに思ってることをだらだらと書きたいと思います。

1. フロアガイドの廃止は「悪」なのか?

 端的に言ってしまえば悪ではないと思います。初めの方にも書きましたが、コロナの流行やペーパーレス化推進を配布廃止の理由として挙げているので、別に意地悪で行っているわけではありません。施設側も買い物行くならスマホぐらい持って来るだろうから、分からなかったら調べるよね(適当)とでも思っているのでしょう。

 大変残念なことですが、ショッピングモールはフロアガイドを刷ることを生業としていません。そもそも、無料で配布しているので極端な話をしてしまうと刷れば刷るほど赤字になります(?)

 あくまでもこれは「サービス」の一環なので、設置していないことを悪く言ったり、【自主規制】だと言ったりすることは好ましくないでしょう。

 しかし、フロアガイドの廃止を「悪」ではないと言うにはいくつか条件があるのでは?と思っています。

2. 「正しいフロアガイドの廃止」について考えてみる

 個人的に「正しいフロアガイドの廃止」にはこういった条件が必要だと思います

   ・Wi-Fi環境が整っている

   ・情報端末が館内各所に設置されてる

   ・大型店舗、核店舗、フードコートなどの場所を床上サインなどで表示している

   ・導線が複雑な箇所を適切に案内している

     などなど…枚挙に暇がありません。

 具体的な例をあげるとしたら、イオンモール岡山(haremachi)ですかね?(Wi-Fi環境がどんなんかは知らんけど)2022年10月後半の訪問時点では、紙の配布物はグルメガイドのみです。

館内のあらゆる箇所に設置されている「フロアマップ」

エスカレーター横のフロア案内

 テナントの入れ替えを考慮してファイル形式(?)になってますね。さすイオンモール

これで迷子にならない?(要出典)

 イオンモール岡山はイオンモールの中では別格とも言える存在で、商圏も広域で行き慣れない人も多く来館することが考えられます。更に他のイオンモールと比べると縦にも広く、メインのモールが1本ではないため、移動設備(まあ中央はわかりやすいけど)や目的としている中小規模の店舗がどこにあるか分からないことも考えられます。そういった点を考慮しながら、パンフレット廃止→情報端末設置などのデジタル化を推進しつつ、適宜案内サインやロケーションマップを設置することは迷いにくくする努力なのだろうなあと思います。(絶対迷わなくなるとは言っていない)

 

3. 紙のフロアガイドの廃止のデメリットについて考えてみる

 ここまでを見ると、私が「フロアガイドは廃止すべき!!!!デジタル化推進しろ!!!!」と変なミスリードされそうですが、紙のフロアガイドの廃止にももちろんデメリットはあります。正直、紙のフロアガイドを廃止するのはイオンモール岡山並みに館内案内を充実させないと難しいかもなあと思います。(個人的にラゾーナ川崎プラザでフロアガイド無しは辛かった)廃止のデメリットについてつらつら書いて行こうかと思います。

 ・館内案内が不十分なSCでは迷子になる

 ・スマホアレルギー(特に年配者)持ちも迷子になる

 ・検索しないといけないorアプリを開かないといけないので面倒臭い

 ・フリーWi-Fiがクソだと役に立たない

 ・わあのような楽天モバイルユーザーは館内に電波が入らないことがあるのでアクセス出来ない(例:新静岡セノバ

 あれ?一番最後以外特にデメリットでは無いのでは??趣味的なデメリットは色々思いつくので書いてみましょう。

 ・記念品が減る

 ・一緒に並べてキャッキャできなくなる

 ・数年分蓄積して、同一施設のテナントの変化等追跡できなくなる

 ・競合調査の資料が減る(最悪、訪問後にプリントアウトでもなんでもできるが)

 ・承認欲求モンスターが満たされなくなる

 うーん…ある程度擁護したかったけど中々難しい。私の場合、1番目と3番目の要素が強いです。厳密には3>1なのですが。余談ですが、手元にある武蔵村山三越のフロアガイドなどはメルカリで買ったものです。自分が人に言えないのでメルカリでフロアガイド売ること自体は否定できません() でも、メルカリで買ったイオンモールのフロアガイド並べて、「イオンモールのフロアガイド全部集めました!!」なんて言われたら「えぇ…」と思いそうですが。

 

4. 施設とオタクの関係性はどうあるべきなのか?

 こんな偉そうな見出しつけていますが、別に普通に接すればいいと思います。

 ここまで2341文字使ってどうしようもないことを書いていますが、ショッピングセンターはフロアガイドを生業としている施設ではないです。これは少なくとも覚えといてほしいです。フロアガイドがない施設を何と思おうが自由ですし、脳内で総務課長に厄介起こすなら誰も止めませんし、非難もしないです。

 あなた方が「劣っている」というツイートしたり、リアル総務課長に厄介を掛けたりすることが最も「劣っている」行為であり、この趣味を「劣ったもの」(=モラルのない人がやる趣味)と思う人が少なくとも存在させることになるでしょう。

 これがフロアガイド廃止の動機につながることだってあり得ます。自分で自分の首を締めていることを分かっているのでしょうか…?

 

 

 

阪急西宮ガーデンズ(西宮阪急・イズミヤ西宮ガーデンズ店)

兵庫県西宮市に所在するショッピングモール。

1. 概要

 阪急西宮ガーデンズは2007年に阪急百貨店、イズミヤ、TOHOシネマズ西宮OSを核に開業しました。同施設が所在する場所は以前、阪急西宮球場が存在しました。

 最寄駅である西宮北口駅は「阪神間モダニズム」と呼ばれるハイカラで文化的な生活様式を生み出した「山の手の玄関口」にあたり、三宮と梅田のほぼ中間地点に当たります(どちらも西宮北口から14分程度)。商圏は半径10km、170万人(2007年当時)年間来場者数は約2000万人を想定しています。半径10km圏には芦屋、宝塚などの高級住宅街が含まれています。

 開業後の売上は約796億円(2016年度時点)、年間来場者数は約1995万人(同じく2016年度)となっています。これは我が国のショッピングモールの中でも有数の売上を誇っています。売場面積も約70000㎡となっています。

誇らしい

 当施設は立地特性も特徴的ですが、立体駐車場を中心部に配置し、4本のモール専門店街でぐるっと囲み、西側に阪急百貨店、東側にイズミヤがある点も国内のRSCでは特徴的な構造だと言えるでしょう。

 しかし、当初からこのプランで考えられていたわけではなく、一般的な2核1型モール、トライアングル型(モールが3本あり各頂点にサブ核と百貨店、GMSがある形。レイクタウンkaze棟が代表例。)も考えられていました。2核1型の場合、立体駐車場からSCへのアプローチが希薄である点が問題とされました。トライアングル型も、業態の多様性を図れるという点では優れていると言えますが、採用された現在の形と比べると劣る物と言えるでしょう。

 つかしんの記事でも触れましたが、阪神間はRSCの競争が激しい地域です。

yurinchi-plaza.hatenablog.com

その差別化という面でも、多くの業態を集積させるということも必要ですが、構造面での差別化を図るためにこの形にしました。しかし、サーキット型モールには自分の居場所がわかりにくくなるというデメリットも存在するため、4本のモールの内装のデザインコンセプトを異なったものにして、デメリットの克服を目指しました。「他のRSCとは格が違わなければならない」という考え方も当館のデザインコンセプトの一つです。

 阪急西宮ガーデンズは、名前の通り屋上に広場を作ることがコンセプトの具現化のために必要でした。駅前立地のRSCですが、自動車での来館も多く見込めるためスムーズな交通導線が求められます。こういった懸案を解決するには中央部に立体駐車場を設置するのが優れているとされたのです。

 こうすれば、サーキット型モールの利点である「全てがメイン導線になる」というのを十二分に活かせる格好になります。中央部を立体駐車場にしなかった場合、人の流れが分散されにぎわいを創出しにくくなるのです。

 時間の都合上、ゲート館と別館については割愛させていただきます。それでは中に入りましょう。

2. 専門店街 

 1階の様子です。阪急側はダブルディやZARAHOME、北側はniko and...、アメリカンホリック、PLAZA、イズミヤ側はマツモトキヨシ、212キッチンストア、フードコート、南側はPLSTやBAYFLOWが出店しています。構造上仕方ないことなのですが、阪急とイズミヤの食品売場が離れているのはちょっと不便ですね。

空間の使い方が良い

関西でしか見ない系(?)

 2階の阪急側にはSHIPS、阪急の化粧品セレクトショップ、北側にはBEAMS、LOFT、Bshop、イズミヤ側はフランフラン、グラニフ、南側にはバナナ・リパブリック、アフタヌーンティなどが入居しています。駅ビルでお馴染み系が多いですね。

もう閉店したらしい

新業態?(もう閉店したらしい)

おしゃれなじぶんまくら

 3階の阪急側はトミーヒルフィガー、北側はハーブス、パーツクラブ、ライトオン、イズミヤ側は銀座山野楽器、メガネの田中、南側はザ・スーツカンパニー、JINSスターバックスなどです。3階より上にイズミヤの売場はありませんが、便宜上イズミヤ側と表記しています。1、2階と比べるとRSCでも見かける店舗の方が多くなってきます。

 4階はスカイガーデン、レストラン街、ジョーシンブックファーストユニクロなどがあります。レストラン街には、どうとんぼり神座、おぼん de ごはん、回転寿司大起水産などが入居しています。スカイガーデンの雰囲気が好き。本当はもう少し明るいうちに訪問したかったのですが、夜の方が綺麗ですね。ブックファーストの大きさにびっくり。

 5階はTOHOシネマズとサービス系専門店があります。ここのQBハウス、おそらく美容室店舗だった気がします。

西宮球場跡地なのでホームベースがある

このタイプのコンパクト型で2本足は珍しい(?)

 案内サインとかはモザイクモール港北とあまり変わらないような…?阪急らしいってことですかね。紙のフロアガイドの配布はあります。

3. 西宮阪急

 阪急ですね。梅田の本店行ってみたい。

 1階は食品・リビング用品・寝具・進物センター・商品券・結納用品・仏具・生活介護用品・補聴器・生花・催事場があります。食品売り場のうち、生鮮食品と一般食品は阪急デイリーマートという名前が付与されています。KYKや古市庵、RF1モロゾフなどのお馴染み組多め。

 リビング用品とかが1階にあるのは珍しい。食品売場の隣に食器売場があります。 

 2階は婦人服、化粧品、婦人服飾雑貨、婦人靴、アクセサリー、ハンドバッグ、時計、ヘアサロン、ネイルサロンです。富澤商店もあります。エスティーローダー、資生堂、シャネル、アガットなどお馴染みブランドも。

 3階は婦人服・フォーマル・婦人肌着・ウェルネスデイズ(ドラッグストア、スポーツ用品)、イベントスクエア、レストラン、会員サロンがあります。

 レストランは南フランス料理店です。高級住宅街を商圏に擁しているだけあります。写真のTHIS IS 365がドラッグストアです。

 4階は紳士服・紳士洋品雑貨・紳士靴・紳士バッグ・アウトドアライフ・ベビー子供服・玩具・絵本・文具雑貨・阪急ハロードッグ(ペット用品)です。

 阪急ハロードッグ内には生体販売、ペットフード・ウェア販売の他にペットの一時預かりやペットホテル、トリミングなどもできるようです。大型のペット専門店では当たり前にやっているサービスですが、百貨店の直営でやっているのは珍しいような…?これの導入を決めたのは、この付近の住民はペットの飼育数が多いかららしいです。

阪急っぽいエスカレーター

 案内サインとかも落ち着いた雰囲気でした。さす阪急。紙のフロアガイドの配布の有無は謎です。インフォメーションは無人状態でしたし…

4. イズミヤ西宮ガーデンズ

 以前は3階まで直営売場だったようですが、今は2階までに縮小されてます。AFSの大型店みたい。

 1階は食品売場です。白いですね。阪急ベーカリーのパンの扱いがあった気がしますが、阪急ベーカリーのHPには何も情報なし。京阪百貨店でも思いましたが、太巻きが美味しそうです。

 2階はココカラファインと衣料品です。ディスプレイがGMSの中で一番おしゃれなような気がする。検見川浜とか行ってみればよかった…

 フロアガイド。シンプルですね。以前直営だった3階には無印良品が秋に出店するようです。

 

5. お気持ち表明

 わが国でも有数の売上を誇るRSCということでかなりわくわくしてたのですが、案の定凄かったです。個人的にはラゾーナよりこっちが好きです。専門店街も他のRSCとの格の違いを感じさせますし、見慣れたテナントもどこか違うフォーマットでアプローチしているなあと感じました。(お客さんも目の肥えた方が多いでしょうし)モール専門店街の中で驚いたのはブックファーストです。関東だとなんかパッとしない印象があるので…

 阪急百貨店については何度も言うように郊外型百貨店=オワコンという認識をある程度壊してくれます。(芦屋や甲陽園、宝塚などの高級住宅街が商圏にあるので成立するのかも知れないけど…)関東ではららぽーとを信仰してそうなファミリー層が阪急百貨店で買い物しているのは印象的でした。関東圏との志向の違いもあるかと思いますが。今回訪問した百貨店はSC内でありながら、タイプが異なる店舗(奈良は都市型、住道は郊外型・専門店中心、尼崎は食品中心、西宮は郊外型)ばかりでしたが、西宮が一番楽しかったです。

 

今回はここまで。ありがとうございました。

グンゼタウンセンターつかしん(アルプラザつかしん)

 

兵庫県尼崎市に所在するショッピングセンターです。

 

1. 概要(開業期)

 当施設は1985年にグンゼ塚口工場跡地に開業しました。セゾングループの創業者、堤清二の提唱する街づくりの理念を体現した施設だったようです。西武百貨店を核としており、マインド・シアターの有楽町、メカトロの店筑波と合わせて西武三部作と呼ばれています。

 つかしん開業からほぼ1年後に出版された「西武(つかしん)地域創造シンポジウム 街づくり発想の時代 (開発)から(想像)」によると、つかしんの街づくりのポイントは以下の七点に纏められています。

  1. 複合魅力のある街
  2. 開かれた街
  3. 界隈性のある疲れない街
  4. 安全で安心な街
  5. 四季をよみがえらせる街
  6. 分かりやすく、情報に溢れた街
  7. 賑わいのある街

 まず、「複合魅力のある街」という点です。つかしんは百貨店、飲食の機能のほかにスポーツクラブ、銀行、ジョギングルート、広場、教会、飲み屋横丁などのマルチコンプレックス性を「街づくり」の柱に据えています。

国内のSCでここまで広い広場があるのは確かに珍しい

セゾンの根幹ともいえる文化情報面でもこの複合性は肝心なものと言えます。つかしんホール(上の画像の正面、茶色部分。現在はフードコート)では美術展を実施しているなか、広場では上方芸能、ヤングライブステージ(こちらも現存せず。にしまちのレンガ色の三角屋根部分がヤングライヴ館?)ではレゲエパーティを実施するなど複合性に長けている施設と言えそうです。

 「開かれた街」というのは文字通り、周辺環境との調和を目指し閉鎖感を無くすことです。そのため、にしまちは一戸建て住宅に合わせて2層の建物が中心となっています。西武百貨店(上の写真中、正面の建物)が階段状になっているのも圧迫感を低減するためだそうです。これは5番目の「四季をよみがえらす街」という点ともリンクしています。

周辺と調和していると言えそう(?)

 敷地面積が甲子園球場の1.5倍ということ(筆者はスケール感がよく分かっていない)ということもあり、「界隈性のある疲れない街」といった要素ももちろん必要になってきます。敷地内を縦貫している伊丹川に1階と2階に二本ずつの橋・連絡通路を設置して回遊性を高め、小路なども設置することで「疲れない街」を実現しようとしていたようです。

 「安全で安心な街」は一般的な商業施設とほぼ同じような感じです。防犯カメラや赤外線センサー、清掃員や駐車場誘導員の配置はもちろん、医務室の設置や消防車、救急車の配備も行っていました。警備員は警備犬とともに施設の巡回をしていました。

 つかしんの特徴を挙げる際に無視できないのは、「四季をよみがえらす街」という点でしょう。地下1階は駐車場となっているため、1階の人工地盤は無機質なものになるのではないか?と懸念していました。そこで、施設内各所に「緑」を配置しました。商業施設として特異な「緑」は落葉樹の設置です。文字通り、葉っぱが落ちるタイプの木ですので、清掃の負担増加となりコスト増に繋がります。しかし、堤は「お客が落ち葉をを踏みしめて歩く体験ができるのがいい」と考えていたため、配置に踏み切ったのです。

 一年中花に出会えるように植栽計画をたて、季節感を感じさせるようになっています。

訪問したのは2月中旬。商業施設なのに四季を感じることができる。

 6番目の「分かりやすく、情報に溢れた街」が目指したものは、個別施設を中心に配置した現にしまちや多くの入口、2箇所に分散された地下駐車場など、来街者にとって不便であり、施設運営上にも好ましくありません。「つかしんの情報」と言ってもこれまでの商業施設と異なり、百貨店の催事案内のみならずグンゼスポーツクラブの会員権、コミュニティチャーチにくる牧師さんなど、膨大の情報を扱うようになります。よって館内に「つかしん情報局」という情報中枢施設を配置し、「街」の放送を全て制御し、これを「タウンガイド」として機能させることを目標にしました。

 当時のセゾンらしい情報発信の取り組みとして、館内に14箇所のテレビ電話を設置や外部との専用回線を設置することにより、つかしん情報局とお客様(リスナー)を繋ぎ、「つかしんファン」を増やすことを目指しました。これは「つかしんダイヤル情報局」と呼ばれていました。

 つかしんダイヤル情報局は、お客様からのお問い合わせ対応の他に館内での伝言サービス、アルバイト情報などの施設の情報に加え、がん検診などの行政関係のお問い合わせに対応していました。こういった取り組みは他のセゾン系商業施設に波及させたいとありますが、他施設で同様な取り組みがみられたかどうかは分かりません。

 

 「賑わいのある街」は読んで字の如くです。館内には数ヵ所のイベント広場が設置されています。有名人のトークショーやキャラクターショーなどSCらしいイベントも開催されますが、つかしんの目指すべき姿は、主婦のコーラス会や朝のラジオ体操、正月には凧揚げが行われるなど生活感や四季感のある演出を創出することです。そのためには、地域の人々が何かパフォーマンスできる舞台や雰囲気を整備することが運営側に求められます。

 コミュニティチャーチでは、結婚式や映画会やジャズ会を実施するなど地域住民の自発的な利用が見られたようです。

 

 こういった施設づくりの方向性は21世紀を見通したもので先進的だと言えますが、SCとしては極めて非効率です。末期には「リボン館」と名乗り、百貨店部分を縮小しコープやミドリ電化ダイソーなどの専門店を導入しましたが、芳しい成果を上げることは出来ませんでした。西武百貨店の撤退を受け、つかしんは大きく変貌を遂げます。

 

1.5 概要(西武撤退後〜)

 西武百貨店の撤退には数々の理由が考えられます。1点目は上でも指摘したように、百貨店もといSCとして非効率だからです。街を意識して、落葉樹を配置していたり、季節感を創出させるために多様な花を植えることはショッピングセンターの管理という点では非効率です。至極当然のことですが、葉を掻き分けて掃除するのにも花を育てるのにも費用が掛かります。

 

 2つ目の要因として立地性が挙げられます。つかしんは、国内でも有数の商業集積地である梅田から直線距離でおおよそ9km、最寄駅である猪名寺駅から大阪駅(梅田)までは14分しかかからないという立地特性を持っています。(直下型立地理論がおそらくこれ)さらに、ダイヤモンドシティ・テラス(現イオンモール伊丹)など新たな競合の出現なども挙げられるでしょう。

 商品展開にもよりますが、地上7階建の百貨店が成立する市場とは言い難いと思います。実際、あまがさきキューズモール内の阪神百貨店も現在は食料品売場となっています。

↓あまがさきキューズモールのブログはこちら

yurinchi-plaza.hatenablog.com

 

 3点目はイトマン事件でのイメージ悪化が挙げられますが、当記事では詳しくは省略します。

 

 西武百貨店の閉店後、つかしんの再生を担ったダイナミック・マーケティング社は以下の再生計画を立てました。

 ①百貨店を中心とした広範囲な商圏設定を見直し、地域密着かつ生活必需性が高い「食」を中心にしたSC

 ②オープンモール形式のメリットを生かしながら、一般的な屋内型モールを中心とする

 ③スポーツクラブやスーパー銭湯の導入、尼崎市姉妹都市であるドイツのアウクスブルクをイメージした雰囲気、多様な生活サービス施設を導入し地域の井戸端会議場となるライフスタイルセンターを目指す

 ④イオンモール伊丹(以下伊丹)を米国型RSCと位置付け、つかしんは欧州型RSCを目指すことにした(=ライフスタイルセンター

しかし、つかしんには以下の問題点があると考えられました。

 

      i. つかしんを再生できるだけのマーケットを本当に持っているのか

     ii. 伊丹との共存は本当に図れるのか・対抗する上ではどのようにすべきか

  iii.  つかしんのイメージが最悪なのに出店する企業は存在するのか

 

 i.の克服には直下型立地という点に着目しました。都心にほど近い場所ということは多くの人が住んでいる潤沢なマーケットと考えることもできます。これは当たり前の話ですが、SCを造る際には立地特性を考慮することが肝要です。

 つかしんが商圏として設定したのは半径5kmの85万人。「余り有る庶民的マーケット」を照準とし、③を再生計画の柱にしました。

 ii.はつかしんは伊丹と対抗するよりも、商圏内の消費者にとって満足のいく共存共栄型のSCを目指すこととしました。このような、互いのSCが異質性や競争優位性により得意分野を明確化し、1つの商圏に数個のRSC、複数のCSCが成立するという考え方を「2.5のSC成立理論」と言います。後にあまがさきキューズモール、イオンモール伊丹昆陽、阪急西宮ガーデンズなどのSCが誕生しますが、この考えのもとつかしんは生き抜いていくことになります。伊丹は2006年当時では規模・売上ともに国内で有数のSCでした。しかし、地域住民にアンケートを実施すると伊丹には戦略的に捨てているニーズがあることが分かりました。ニッチニーズに応えることで魅力あるSC造りが可能になるということです。

 つかしんと伊丹の主な相違点は下にまとめます。

 

<つかしん>

・日欧志向のRSC

・平成〜昭和期のファミリー層をターゲット

・MDは「食文化」を中心にしたもの

・中域型で多頻度来館

・屋内型とオープンモールのハイブリッド

・ストリートモール形式(中央部にどーんと大きな吹き抜けがある形式ではない)

 

イオンモール伊丹>

・米国志向のRSC

・平成のファミリー層がターゲット

・MDはファッションが軸

・広範囲型で小頻度来館

・一般的なモール型SC

・吹き抜けが通路中央部にある一般的な形式

 

 さらに、つかしんには1.の概要で書いた通り「街づくり型」であったり人工物と自然が融合していたり(=四季をよみがえらせる街、複合魅力のある街)するという独自性の高いアドバンテージを持っています。外観も伊丹が一般的なハコ型SCであるのに対し、つかしんは「開かれた街」という側面もあります。

 iii.はSCの成否を決める重要なポイントです。しかし、つかしんは流通業界内、地域住民の中での評価は低く「つかしんは変わる」という認識を作ることが至上命題でした。伊丹とは違う性格を持ったSCを作ったのはこの命題を解決するためという側面もあります。出店企業にも「つかしんはSCの立地として不適当」という認識を変えてもらう必要がありました。

 

 ハード面では増床部も地域の景観に合ったものにし、駐車場をSC利用客から見えるところに置かない(従来の地下駐車場に加え、増床部高層階にも設置)などセゾン時代から踏襲している点もあります。しかし、つかしんは「デザインが陳腐化しないSC」を目指し、セゾン時代とは若干の差異を持たせようとしました。

 SCを家庭でも職場でもない第3の環境と位置づけ、(これをサードプレイスともいう)利用客に飽きられないような「しつらえ」と呼ぶべきレベルまで高めることにし、デザインを目で見るものだけではなく、脳や心に訴えかけそれを持続化することです。これには2点のぽインチがあります。

 1つ目は「意味づけ」です。利用客にしつらえの考え方や由来を理解してもらうことで、第3の空間に参加してもらおう(=しつらえの完成)とするものです。つかしんにはフードコートなどをはじめ、一つの空間に何かしらの意味付けを持たせています。

 2つ目は「必然性」です。ここで言う必然性とは、デザインと第3の空間を間接的に準強制的に体験させることです。多頻度来館型のつかしんでは、利用客がデザインに飽きることは想像に難くないでしょう。しかし、そのデザインのある空間に利用客が常に行ってしまうような何かを用意したらどうでしょうか?そうすると、利用客の美的感覚と快適性、必然性が結びつきデザインや第3の空間が持続可能な機能となります。

 つかしんは急速的にデザインが飽きられますが、空間に意味付けや必然性を保持させることで、「しつらえ感」に昇華させます。地域とSCを見えない糸がデザインや第3の空間としての場にしつらえ感を与えることになるでしょう。

 

 長々と概要を書いてしまい、申し訳ありません(笑)。リーシングやMDにおいても特徴的な点がありますが、ここからは館内の訪問レポを書きながら触れたいと思います。

 

2. ひがしまち

これが「場」の一つなのだろうか

 1階は食品、雑貨、フードコートAIがあります。テナントはコープこうべコメダ珈琲店スターバックススガキヤ、3COINS plus、生鮮食品の専門店など。フードコートAIの「AI」についての説明は写真にありますが、若干わかりにくい点があると思うので以下に書き出します。

FOOD COURT・AIは出会い(AI)・ふれあい(AI)の場でありたいという思いと、地域の皆さまに愛(AI)される場でありたいという気持ちを込めて、尼崎(A)伊丹(I)の頭文字を取り、「AI」と名付けました。

  フードコートAIは上記で触れた「第3の環境」を造る上で重きを置いた場所です。フードコート内の街並みは、尼崎市姉妹都市であるアウクスブルク市をモチーフにした物です。このアウクスブルクの街並み的な内装も、リニューアル・増床時に設置しました。

 核店舗が「アルプラザ」なのにコープが入居している点に違和感を感じた読者はいらっしゃいませんか?(ヲタク君は野暮なツッコミをしないように…)これはつかしんのリーシング方針があるのです。

 つかしんは改装時に食を基軸としたMDを構築したことは上記の通りですが、もう一点重要なポイントがあります。それは同業種間で競合させることです。前述の「アルプラザ」と「コープ」の他に「西松屋」と「バースデイ」、「阪急ベーカリー」と「ドンク」など他の商業施設とは異なったリーシング方針であることがわかります。

 1階の食品ゾーンは地元商店の生鮮食品専門店を軸にじゃんぼ總本店などが入居しており、SC内に商店街的空間を形成できていて面白いなあと思いました。

百貨店ぽいような…と思ったけど違った

増床痕

関西なんだなあと思う

 2階は衣料と雑貨のフロアです。主な店舗はGU、ABC-MART メガステージ、ライトオンです。自動車教習所の受付がある点も面白いです。にしまちへのデッキもこのフロアにあります。

90〜00年代のSCっぽい

 3階は衣料、衣料雑貨、ゲームセンターがあります。主な店舗は西松屋、バースデイ、しまむら、ディパロ。06年に増床した部分が売り場となっているのはこのフロアまでです。

一気に百貨店跡感が強まる

 4階も雑貨と衣料が中心です。主な店舗はユニクロ無印良品ヴィレッジヴァンガード。4階以上はリボン館時代から大きな改装はしていないのでしょう。日没前に西宮ガーデンズ行けるか微妙になってきたので、このフロアからの画像は少なめです…申し訳ないです。

 5階はジョーシン。普通の家電量販店といった雰囲気でした。

 6階はカルチャーセンター、ニトリデコホーム、ピュアハートキッズランド。特に感想は浮かびません。

 7階はダイソー。1フロア丸々使っているので、港北東急感があります。

3. にしまち

新生つかしんの目玉とも言えた温浴施設

 ヲタクが好きなつかしんの成分の6割ぐらいはおそらくにしまちにあります。早速中に入ってみましょう。

 建築年代の差を大きく感じる(こなみ)にしまちの一部エリアは2013年に建て替えました。1階は飲食店、スポーツクラブ、ペットショップ、温浴施設があります。主な店舗はペットショップアミーゴ、ミスタードーナツサイゼリヤグンゼスポーツなど。

 訪問時点では改装工事着手前だったので、写真2枚目の部分に行けました。80年代当時はおしゃれだったんだろうなあ感があって好き。

 2階はセガ、ふたば書房(フタバ図書じゃないよ)、手芸センタードリームなどが入居しています。少し前までは飲食店も割とあったっぽいですね。おしゃれ。

いろいろ

西武っぽい

紙のフロアガイドは「タウンガイド(?)」という名称で配布しています。

 

4. アルプラザつかしん

2006年増床時からの核店舗です。それでは見ていきましょう。

 1階は食品館です。都市部にほど近い店舗らしく賑わっています(まあ訪問したの夕方だったし…)。インストアベーカリー、時計修理店などもあります。

 2階は婦人&紳士ファッションのフロアです。アルプラザって王道を行くGMSって感じがします。(よくわかっていない)

 3階はキッズファッションと暮らしのフロアです。携帯コーナーの「通信情報センター」という表記が00年代っぽい。

5. お気持ち表明

 現在のコト消費、SCがレジャー施設化している点や都市機能を持ったSCが登場している点を考慮すれば「つかしんは失敗だった」とは言えません。もちろん、百貨店としての立地性の悪さやコストが掛かりすぎた点では失敗であったと思いますが。

 真の意味でつかしんを完成させたという意では2006年の増床を伴った改装が当てはまります。当記事の作成に大いに役立った文献には「つかしんを活気に溢れさせること」を成功のポイントとしています。サードプレイス的な戦略や、商店街的なMDを作ることで活気を作っているのだ。セゾン時代に成し遂げられなかったのは皮肉ですが…

 「兵どもの夢の跡」という視点で見ても非常に面白いSCではありますが、つかしんにおいてはリーシングやMD、ゾーニングにも着目してほしいです。

きっしょいお気持ち表明中に増床前の避難経路図が!

今回はこんなもんです。

長々お付き合い頂きありがとうございました。

 

参考文献

ダイヤモンド社 西武「つかしん」地域創造シンポジウム 街づくり発想の時代 「開発」から「創造」へ 流通産業研究所 2022年6月12日最終閲覧

(ISBN:4-478-50050-4)

日経PB社 セゾン 堤清二が見た未来 鈴木哲也 2022年5月10日最終閲覧

(ISBN:978-4-8222-5605-0)

https://web.archive.org/web/20140323140234/http://www.dynamic-m.co.jp/xdw/tsukashin-saiseimonogatari.pdf

ダイナミック・マーケティング社 グンゼタウンセンターつかしんの再生物語

2022年6月11日最終閲覧

つかしん 2022年6月12日最終閲覧